- 退去費用と請求されるポイントがどこだかわからない
- なるべく退去費用を抑えたい
転勤の多い子育て家庭によくある悩みですが、ポイントをつかめば費用をかけず退去することができます。浮いた費用で子どもたちとおいしいご飯を食べたり、どこかにお出かけしたりと思い出をたくさん作ってください!
この記事では、
- 費用を抑える方法
- 退去時に業者が請求するポイント
について詳しく解説していきます。
国土交通省の資料などを引用しながら詳しく解説していくので、退去の際はぜひ参考にしてみてください
退去費用について
まず知ってほしいのが退去費用の意味です。
間違った認識をすると確実に損します!!
現状回復費用のこと。
退去するときに自分で汚した、壊した部分を自分で直してねってやつ
つまり借りた当時の状態に戻せってこと?
違うよ!それはよくある勘違い!!
実は退去費用とは
「普通に生活していて発生した痛み汚れ以外」で物件に与えたダメージを復旧すること
つまり、自分で壊したとこだけ直してね!ってことなんです
トリビアの泉だったら66へぇくらいもらえますね
実際、国土交通省の現状をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)でも以下のように原状回復を定義してます
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義
国土交通省の現状をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版) 本ガイドラインのポイント より
これを知らないと業者に普通にぼったくられるので注意しましょう
退去費用を抑えるためのポイント
退去費用を抑えるためのポイントは以下の5つです
- 原状回復では借りた当時の状態に戻さなくて良い
- 故意・過失によって傷つけた箇所は新品価格を負担しなくてよい
- 故意・過失によるものでも壊れた箇所を負担するだけでよい
- 自分の過失でつけた傷は火災保険で回復できる
- 特約に記載されていても無効な契約が多い
1.原状回復では借りた当時の状態に戻さなくて良い
入居者が直すべき範囲について知っておきましょう
自然損耗部分:直さなくて良い
自然損耗の修繕費用は家賃に含まれています。負担する必要はありません
・壁紙の黄ばみ
・畳の日焼け
・家具を設置したことによるフローリングのへこみ
・クロスのこすれ
借主の故意・過失による損耗:払う
現状回復ではこれらの損耗部分の費用を払いましょう。入居者負担です
・子どもの落書き
・モノをぶつけた際の破損
・タバコ、ヤニ汚れ、焦げ跡
入居者が直すべき範囲も国土交通省の現状をめぐるトラブルとガイドラインに明記されています
標準契約書では、建物の損耗等を次の 2 つに区分している。
国土交通省の現状をめぐるトラブルとガイドライン p8 Ⅱ 契約の終了に伴う原状回復義務の考え方 1 賃借人の原状回復義務とは何か (1) 標準契約書の考え方 より
① 賃借人の通常の使用により生ずる損耗
② 賃借人の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗
これらについて、標準契約書は、①については賃借人は原状回復義務がないと定め、②については賃借人に原状回復義務があると定めている。したがって、損耗等を補修・修繕する場合の費用については、①については賃貸人が負担することになり、②については賃借人が負担することになる。
上記のほかに払うべき?ってのがあったらどうすればいいの
ガイドラインのp17から見てみて!詳しく書いてあるよ
国土交通省の現状をめぐるトラブルとガイドライン p17~ 別表1 損耗・毀損の事例区分(部位別)一覧表 (通常、一般的な例示)
※色付きで書かれている部分が入居者の支払う部分です
2.故意・過失によって傷つけた箇所は新品価格を負担しなくてよい
実は故意・過失によって傷をつけてしまった場合でもその箇所を新品の価格で直す必要はないんです
正確には残存価格で負担すればよいという風になっています
残存価格とは?
現時点でのその商品の価値・価格のこと
モノには耐用年数というものが決まっており、畳・カーペット・クッションフロアは6年、流し台は5年、エアコンは6年ほどです。
その対応年数に近づいていくにつれて、モノの価値も下がっていきます。耐用年数になると実質そのモノの価値はなくなります。
モノの価値が下がっていくんだから、そのモノ以上の金額を払って直す必要はないよというのが賃貸での考え方なのです
残存価格 具体例
新品価格で10万円する畳。6年で耐用年数になる。借主Aが入居する際に畳を新品にした。
Aは、3年住んで退去することになった。Aは、入居中に畳を汚してしまったので畳代を払わないといけない。3年経過した畳の価値は5万円。
この場合、Aは、3年経過後の畳の5万円だけ支払えばよい。
これが、残存価格分だけ支払おうねというものです。
支払う費用のイメージは以下の画像の通りです。
皆さんは下記の原状回復の部分だけ負担すればOKなんです
東京都住宅政策本部 賃貸住宅紛争防止条例&賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(概要版)p4
3.故意・過失によるものでも壊れた箇所を負担するだけでよい
故意・過失で壊れた場合でもう負担する部分は壊れた箇所のみで大丈夫です。
仮に壁紙を汚してしまった場合、壁一面張り替える必要はありません。その部分だけの張替えになります
もちろん新品価格ではなく、残存価格で負担です
全面張替えと言ってくる業者がいた場合、注意しましょう。皆さんが知らないのをいいことにぼったくりにきています。
4.自分の過失でつけた傷は火災保険で回復できる
傷をつけてしまったときは火災保険を使いましょう。
火災保険には、借家人賠償特約というものがついています。
借家人賠償特約とは?
賃貸に傷をつけてしまったとき(大家さんに損害を与えてしまったとき)に保険会社が代わりに損害費用を支払ってくれる制度のこと
火災保険を使うメリットは3つです
- 何回使っても保険料が上がらない
- 保険の等級が下がらない
- ほとんどの場合適用になる
しかし、注意点もあります。火災保険は入居中しか使えない点です。
退去手続きが完了してからは使うことはできません。破損してしまったときは速やかに火災保険を使いましょう
5.特約に記載されていても無効な契約が多い
契約書に退去時のいろいろな特約が記載されていることがあります。ハウスクリーニング費用、鍵交換代、美装代‥など
退去時に交渉してみたんだけど、業者さんに「特約に記載されてるよね」「入居時にさいんしてるよね」と言われてどうにもならなかった……
こんな経験してる人いませんか?
実はこういった特約、ほぼ無効なんです!
特約では次に住む人のための費用は認められていません。
上記の退去時の鍵交換代、ハウスクリーニング代、エアコン清掃代、これらは大家が負担するものです。入居者は払わなくて大丈夫です
特約が認められるためには3つの条件があります。
特約が認められる3つの条件
- 具体的な金額が書かれている
- 契約者がきちんと内容を確認している
- その特約のページに記名押印があること
参考判例:最高裁 平成17年12月16日 参照
3つの条件すべてがそろっていない項目は法律上無効になる可能性が高いです。
業者から一方的に言われた場合、3つの条件は満たしづらいと思います。その際は払わなくても大丈夫ですよ
また、上記の内容は以下を簡単にしたものです。
【賃借人に特別の負担を課す特約の要件】
① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)p7
② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて
認識していること
③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
まとめ:知らない=損する
今回は「退去費用を抑える方法とポイント」について詳しく解説しました。退去費用を抑えることも大切ですが、「賃貸を借りるときの費用を抑える」「引っ越し費用を抑える」ことについてはさらに重要です。
以下の記事では「入居時に抑えられる費用」「引っ越し費用を抑える方法」について解説しているので、こちらの記事もぜひ併せて読んでみてください。
紹介した記事の内容をすべて実践すれば、新生活を始めるための費用を20万円以上抑えることができます。浮いた費用で新生活を豊かにしてみてはどうでしょうか!